家族法関係事件手続きのあらまし

家族法関係の事件には、
 
調停又は審判によって扱われる家事事件(家事事件手続法1条)
 訴訟による人事訴訟事件
(人事訴訟法2条)とがあります。
 これらは、全て家庭裁判所(「家裁」と略させてもらいます)で扱われますが、
   ※但し、遺留分侵害額請求事件等、調停は家裁で行われても、人事訴訟事件ではないため、訴訟は地裁で行われるものがあります。
家裁においては、
(調停に馴染む事件については) まず「調停」から始めなければならないという手続面の制約があります。
調停前置主義 といいます(家事事件手続法257条)
 以下は、主に離婚を念頭に説明します。

 家事事件は、人の身分、或いは、それにまつわる生活状況や内心の秘密に関わり、婚姻秩序等の公益的側面もある
ことから、利害対立を、通常の裁判のように、公開の法廷での互いの弁論と証拠に基づいて、一刀両断に解決するよ
り、非公開の場で、職権による進行という原則の下、調停委員会の関与によって、身分にまつわる非合理的側面や人
間関係の調整も図りつつ、柔軟に円満な解決を、まず調停によって探求しようというものです。


 
 調停では
非公開の調停室に調停委員が入って、(別々の部屋に控えている) 当事者に、(入替わりで)結婚親族生活等の状況
や事情
それに対する考え希望等を聞いてくれ調査官が入ることもあったり調停案を示してくれたりもします。
 調停によって成立する離婚を「調停離婚」と言います。調停成立の調停調書は確定判決と同一の効力があります
(家事事件手続法268条)調書作成等 手続きの記録化や進行補助は書記官が担当します。
 


 調停が成立した際には書記官によって調停調書又、調停不成立で審判に移行した場合には審判官により審判書
作成され、これらが判決と同じ効力をもちます
から、これに基づいて強制執行に進むことができます(調停に代わる
審判の効力については家事事件手続287条)
(→養育費の強制執行)
 ここでの「審判」というのは、調停が不成立となったときに、
   例えば、離婚することについては当事者間に合意ができているのに、その他の僅かな点で折り合うことができ
   なかったような場合、その点について裁判所が後見的な立場から判断を示せば解決できそうだというときに、
    
(但し、下記の「合意に相当する審判」の対象となる人事訴訟事件は除きます) には、直ちに調停を打ち切ることをせずに、
   裁判所が職権
調停に代わる審判を下すことができるというものです(家事事件手続法284条)
    これによる離婚を「
審判離婚」と言います。
     調停に代わる審判は、2週間以内に適法な異議の申立てがあると失効するので、異議が出ると、その後は上記のとおり訴訟で争うことになります。

 しかし、相手が調停に応じてくれなかったり、調停で話し合っても、調停成立に至らないときは ※、

人事訴訟事件 ( 離婚、離縁、認知と下記括弧内のもの )なら訴状を提出して訴えを提起し法廷で審理される訴訟
 の手続きに入ります。
それ以外のもの (= 審判事件) は、審判廷で、審判官が入って、「審判」で決着を図ります。
  ※
但し、離婚、離縁以外の人事訴訟事件
  
(婚姻・離婚・縁組・認知の各無効・取消し、嫡出否認・父を定める訴え、実親子・養親子関係存否確認等)
  については、調停中に当事者間で合意ができ、裁判所による調査の結果、その合意が正当であると認められると
 
合意に相当する審判がなされます(家事事件手続法277条)。この審判についても判決と同じ効力が認められています
(同法281条)
  ☆
審判事件には、家事事件手続法の

  別表第二に掲げられている次もの、
   
婚姻費用分担、親権者の指定・変更、養育費面会交流財産分与、年金分割、扶養料、寄与分、遺産分割等 
  別表第一に掲げられている
子の氏の変更許可,相続放棄,名の変更の許可,後見人の選任,養子縁組の許可等 

  があります。別表第二のものは、
当事者間に争いのある事件であることから、第一次的には当事者間の話合いに
  よる自主的な解決が期待されるので、前記した調停前置の原則により、まず調停で扱われます。

 念のため家事事件手続法の277条を転載します。


 念のため家事事件手続法の277条を転載します。

合意に相当する審判の対象及び要件
第二百七十七条 人事に関する訴え離婚及び離縁訴えを除く。)を提起することができるについての家事調停手続において、
次の各に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一合意を正当と認めるときは、
当該合意に相当する審判以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる
 ただし、当該に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。
 一 当事者間に申立て趣旨のとおりの審判を受けることについて合意成立していること。
 二 当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消し原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。
2 第一合意は、第二百五十八第一において準用する第五十四第一及び第二百七十第一規定する方によっ
ては、成立させることができない。
3 第一の家事調停手続調停委員会で行われている場合において、合意に相当する審判をするときは、家庭裁判所は、その調停
委員
会を組織する家事調停委員意見を聴かなければならない。
4 第二百七十二第一項から第三項までの規定は、家庭裁判所が第一第一規定による合意を正当と認めない場合について準用
する。

 家裁の審判に対する不服申立ては、高等裁判所に「即時抗告」し、
 即時抗告に対する不服申立ては、最高裁判所に「特別抗告」します。
 

 
人事訴訟の結果、判決によって離婚となる場合を「裁判離婚」と言います。
   訴訟となってからでも、終局判決に至る前に、当事者間で、
   被告側が原告の請求を認めて訴訟を終える「認諾」
(民訴266条)があると、認諾離婚(人訴37条)が、
   互いに譲歩して終える「和解」
(民訴89条)があると、和解離婚(人訴37条)
  それぞれ成立します。それぞれ、その手続調書が、
裁判離婚の判決と同一の効力を持ちます(民訴267条)


 人事訴訟では、参与員が入って「和解」を試み、或いは意見を述べることがあります。
 審判では、訴訟と異なり審理が法廷で公開されることはありません。
 また、人事訴訟同様に参与員が意見を述べ、或いは、調査官が当事者間の葛藤を調整したり、
 カウンセリングをする等の関与をし
(調査官は、必要に応じ、調停や人事訴訟でも関与することがあります)て、
 裁判所が柔軟に妥当な結論を導くべく、後見的に関わってくれる仕組みとなっています。

 訴訟で出された判決に不服があるときは、高等裁判所へは「控訴」、
 最終審としての最高裁判所には「上告」することになります。

 家庭裁判所での調停手続審判手続人事訴訟手続の各説明、及びその書式等は、裁判所のホームページを、各
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